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Channel: シェフのフライロッドの世界
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実物で辿るフライラインの歴史 その6

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途中で脱線・中断してしまったのでは・・・ということはなくて、なかなか整理する時間が取れずに
延び延びになってしまいました。

馬尾毛からシルクラインへ。19世紀後半にはその流れが定着します。
シルクラインも単純なレベルラインからダブルテーパー、ウェイトフォワードへと発展します。
しかし、それが何年ごろに誰によってなされたのかははっきりしません。
ただひとつはっきり言えることは1800年代には既にかなりの数の会社がフライラインを製造販売
していたということです。

20世紀に入ると従前のウェットに加えて、新たにドライフライが出現し、ラインをなるべく水面に
浮かせておくために、シルクラインに浸み込ませるオイルなりワックスにも、鹿や熊の脂肪を
使用したり、パラフィンや鉱油、あるいは亜麻仁油を使用したりと種々の工夫が加えられます。
水分を吸収したシルクの上にいくらドレッシングしても無駄です。ラインが乾くのを待つのか、
リールから巻き出して反対側を使用するのか、あるいは交換するしかありませんでした。
したがってシルクラインにいかにして水を吸収させないのか、それがラインメーカーの大きな
課題となりました。
それを解決したのがエナメル・コーティングです。

これも年代がはっきりしないのですが、少なくとも第二次世界大戦前までにはエナメル・
コーティングされたシルクラインが相当出回っていました。
エナメルとはいえ、七宝に見られるガラスのコーティングによるエナメルではなく
(そんなことしたらラインが即沈んでしまいます)、石油から作られた化学製品を使用した
コーティングで、代表的なものにポリ塩化ビニルがあります。
エナメル・コーティングした銅線と言えば想像が付きやすいのではないでしょうか。
このポリ塩化ビニル、1930年代にはドイツを皮切りにアメリカでも製造が本格化しました。

一方、シルクに取って替わるナイロン(ポリアミド)は1935年にデュポンが開発、かの有名な
ナイロン・ストッキングが発売された1940年より1年前の1939年にフライラインとして
商品化されました。
軽くて丈夫で大量生産が可能なナイロンはフライライン(何もフライフィッシングに限った
ことではなく、釣りに関わるライン全般)の中心(物理的にも核となります)となります。
しかし、このナイロンとて吸水性があり、使っているうちに重くなっていきます。
したがって、このナイロンにもエナメル・コーティングをする必要性があったわけです。
オールドリールに巻きつけられたラインの表面がねばねばするのはまさにこの
エナメル・コーティングのせいです。

最初の3枚の写真はShakespeare社のキャデラック・シルクライン(50~60年前)で箱に入っている
ラインはエナメル・コーティングが溶けて再び固まってしまったもので、25ftが3連になっている
ものをひとつ切り出してフルガーに巻いてみました。
剥がすのが大変でしたが、このラインを使用して当時のロッドでキャスティングを試みました。
(この話は次回に)

そして次の何枚かの写真は同じShakespeareでも、エナメルではなくて、独自のオイル処理をした
もので、1952年に始めて発売されました。
50年以上経過した今でもすぐに使える状態です。
ケースの中には、いままでのようにエナメル・コーティングの劣化から来るベタベタさが無くなった
ラインであるという説明書や、当時発売されたワンダーロッド(グラスロッド)の紹介であるとか、
オートマティックリールの広告があります。
そう当時はオートマティックリールにシルクラインを巻いていたわけですね!

Ahsawayは1824年に作られた米国最古のフライラインの製造会社のひとつですが、1939年に
デュポン社のナイロンを初めて使用してフライラインを製造した会社としても有名です。
写真はまさにそのナイロンラインで、未使用。
このラインもいますぐにでも使用可能です。

最後の写真はCortlandのアイヴァンホーシルクライン。
これも未使用で、今でもすぐに使える状態です。

(参考文献はAmerica’s Fly Lines by Victor R. Johnson, Jr. 2003 EP Press)


以下フライラインを製造していた米国の会社 (設立年代順)

***************************
(1800年代)
B.F.Gladding & Company(1816)(*)
Ashaway(1824)
Hall Line Corporation(1840)
U.S.Line (1800年代半ば)
Rain-Beau(1866)
Gudebrod, Inc. (1870)
Pflueger(1886)(*)
Horton Manufacturing(1888)(*)

***************************
(1900~大恐慌以前まで)
Weber(1900頃)
South Bend(1905)(*)
Shakespeare(1905)(*)
Newton (1909)(*) 
Horrocks Ibbotson(1909頃)(*)
Cortland(1915)(*)
Bevin Wilcox(1919)
Abu (1921)(*)
Garcia (1920頃)(*)

*****************************
(大恐慌から第二次世界大戦前)
Western Fishing Line Company(1930)
Norwich Line Company(1930)
Sunset(1932)
Berkley (1937)(*)
Marathon (1937頃)(*)

******************************
(第二次世界大戦後)
Scientific Anglers(1945)(*)
Fenwick (1954)(*)

(*)はフライライン以外の商品も提供している会社

以上

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