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Channel: シェフのフライロッドの世界
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実物で辿るフライラインの歴史 その8

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シルクからナイロンやポリエステル(ダクロン)へ、デュポン社の発明のおかげで

フライラインのコア部分は軽くて強度の高い新素材へと大きく進化を遂げました。

と同時にナイロンでも解決できなかった吸水性の問題を解決するために、

あるいはラインの飛距離を伸ばすために、エナメルコーティングが発達しました。

しかし、直射日光が当る場所などに長く放置しておくと、エナメルが溶けてベタつくこともあり、

改善の余地が必要でした。



電線のようにポリ塩化ビニル(PVC)や等でコアのラインを包む形式がはっきりしてきたのは

戦後から50年代に掛けてです。

ここの功労者は製造方法を確立したScientific AnglersとGradding社です。

そしてこのPVCラインに加えて、その後ポリウレタンを纏うラインも多く出てきます。



さて、このPVCラインの製作方法ですが、PVCとの固着を高めるためにコアとなる

ナイロンやダクロンにプライマーと呼ばれる下塗りをします。

その後液体となっているPVCを潜らすわけですが、このPVCに何を混ぜるのかが秘伝のレシピになります。

着色料はもちろんの事、潤滑剤、紫外線からの劣化を防ぐ薬品などいろいろ混ぜられます。

一方、ポリウレタンを絡める作業は、PVCのように液体をくぐらすのではなく、

ポリウレタンの入ったチューブからコアラインごと押し出すような形で纏わせます。

両方とも比重が水より重いのでほっておくと沈みますが、中に気泡をいれるなど、

何らかの手立てがなされています。



ではPVCとポリウレタンと何がどう異なるのか。

PVCはポリウレタンより劣化が早く、表面にひびが入りやすい。

ポリウレタンはPVCより製造時間が短く、コストが安い。

しかし、巻き癖(コイルメモリー)はポリウレタンのほうがPVCよりきつい。

などなど・・



現在のPVCラインもポリウレタンもコアとなっているナイロンラインを直接見る事はできませんが、

写真にあるとおり初期のPVCラインは、中のナイロンラインの編みこみが見事に見えます。

最初は透明なチューブで包むという感じで作られていたようです。その後グリーンをはじめ、

ピンク、ブルー、オレンジ、イエローなど視認性の高いカラーが増えてきました。

これらのラインを見た時に、

シルク⇒ナイロン⇒エナメルコーティング⇒「????」⇒現代のPVCライン

と繋がる系譜のミッシングリンク「????」の姿を発見できた気持ちになりました。

Newton、Gladdingともにいまでもすぐに使そうです。



追伸です・・・・
ドレッシング(ミーシュリン赤)を十分にした普通のシルクラインと、エナメルシルクラインを持って、止水で釣りをしてみました。
川だと気が付かなかったのですが、最初は浮いているラインの左右にドレッシングが滲み出し、
環境汚染をしているような雰囲気に。
すぐに流れ出してしまったので、あとは先端から緩やかに沈むような感じでした。
釣果はフライに依存するので、ラインはある程度飛べばいいと思っていましたが、
元気のいい魚は、カッタクリ釣りのように魚信がダイレクトに伝わって面白かったです。
そもそもフライフィッシングはラインを直接手繰って魚を引き寄せる釣りではありますが
(リールを必要とする大型魚は除きます)、古いラインは素材が素朴なだけに、
魚の感触が無骨に伝わってきて楽しいです。

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